民法改正がマンション滞納管理費回収の実務に与える影響
今年(2017年)、民法制定から約120年ぶりに債権法を中心に見直した改正民法が成立しました。
主な改正点としては、
- 時効
- 個人保証
- 定型約款
- 法定利率
- 契約不適合責任
などが挙げられております。
マンション滞納管理費の関係では、「時効」と「法定利率」が影響のあるところです。
マンション滞納管理費と改正後の「時効」制度
時効に関しては、定期給付債権の5年の短期消滅時効制度は廃止されたものの、債権の消滅時効は債権者が権利を行使することができることを知ってから5年間行使しないときは時効によって消滅すると定められたため、結局、一般的な管理費等の5年間の消滅時効期間に変わりはありません。
ただし、現行法だと、毎月発生する管理費ではなく、修繕一時金などの一時的な費用に関しては10年間の消滅時効期間が適用されるところ、改正法によると、そのような一時金も5年間の消滅時効期間に服することになります。この点は注意しておいた方がよいかもしれません。
マンション滞納管理費と法定利率の変更
また、法定利率が年5%から年3%に変更されたこともマンション滞納管理費の問題に影響があります(改正後は法定利率の変動制度も設けられました。)。
管理規約で遅延損害金の利率を定めているマンションであれば問題ないのですが、そうではないマンションの場合、民法所定の法定利率(現行法であれば5%、改正法だと3%)が適用されることになりますので、遅延損害金の利率が下がることになりますし、マンション滞納管理費の問題は長期化することも少なくありませんので、法定利率の変動制の影響も受け、遅延損害金の計算が煩雑になることも考えられます。
もし、現時点で、管理規約に遅延損害金の利率の定めがないマンションがあれば、早めに規約を変更して、遅延損害金の利率を定めておくことをおすすめいたします。
まとめ
以上の2点がマンション滞納管理費の問題に影響のある改正点ですが、毎月発生する管理費に関しては5年間の消滅時効期間に変わりはありませんし、規約で遅延損害金の利率を定めているマンションであれば法定利率の変更も影響はありません。
そうすると、マンション滞納管理費に関しては、実務上は民法改正の影響はそれほどないものと思われます。
ただ、多少の影響はありますし、知っておいて損はないことですので、マンション管理に携わっている方は最低限は民法改正についても勉強されることをお勧めします。