マンション滞納管理費の基礎知識

管理費等支払請求訴訟に必要な書類

管理費等支払請求訴訟を提起する際に必要な書類の解説

マンションの管理組合が区分所有者に対してマンション滞納管理費の支払を請求する訴訟を提起する際に、裁判所に提出しなければならない書類について解説します。
基本的には弁護士に委任をしてその指示に従うのがベストだと思いますが、費用面等でどうしても管理組合自身で訴訟を追行したいという場合に参考にしてください。

1 建物の全部事項証明書

まず確実に必要なものが管理費を滞納しているマンションの部屋の全部事項証明書(登記簿謄本)です。
これは法務局にて取得することができます(オンライン申請も可能です。)。
全部事項証明書によって、被告が管理費滞納が発生している部屋の所有者であることが証明できます。

2 マンションの管理規約

マンションの管理規約も原則として必要になります。
原告が管理組合である場合、その管理組合が原告になることができる資格を有するかを判断するためです。
また理事長が代表者となる場合は、管理規約に理事長を代表者とする旨の定めがあれば、理事長が管理組合を代表することができます。
さらに原告は被告に管理費の支払義務があることを証明する必要がありますが、管理規約に管理費の支払義務の規定があれば、それが証拠になります。

3 訴訟提起を決議した際の総会議事録

管理組合が訴訟提起をすることを決議した際の総会議事録も必要となることが多いです。
これは、そもそも訴訟提起をすることができるのかということを判断するためです。
ただし、管理規約に理事会の決議で訴訟提起ができる旨の定めがある場合は、総会議事録にかえて理事会議事録を提出することになります。
また、管理規約に理事長の判断で訴訟提起ができる旨の定めがあれば、総会議事録も理事会議事録も必要ありません。

4 理事長選任時の総会議事録・理事会議事録

理事長選任時の総会議事録や理事会議事録も提出を要求されることが多いです。
代表者とされている理事長が本当に資格を有しているかどうかを判断するためです。
個人的には訴訟提起を決議した際の総会議事録に現在の理事長の氏名が理事長として記載されていれば、その理事長の選任時の総会や理事会の議事録を提出する必要はないと思っています。なぜなら、少なくとも、その時点で理事長であることが証明されているのだから、その後に理事長変更がない限りその者が理事長のはずだからです(訴訟提起の決議から期間が空いている場合は、その後に再任された際の議事録が必要になると思います。)。ただし、裁判所から要求された際は争って時間をかけるよりも提出した方が早いのでさっさと提出するのが賢明だと思います。

5 管理組合法人の現在事項全部証明書

管理組合が法人である場合には、管理組合法人の現在事項全部証明書が必要となります。

6 訴状

当然ですが、訴訟を提起するには訴状を提出する必要があります。
訴状の書き方については、裁判所のHPなどを参考にしてみてください。
ただし、裁判所のHPの書式であっても不十分であることには注意してください。
訴状の記載が不十分であるとそもそも訴状を受理してもらえなかったり、本来請求できるはずのものが請求できなかったりしますので、気を付けてください。

7 収入印紙・予納郵券

訴状には訴額に応じた収入印紙を貼る必要があります。
一般の方の場合、訴額の計算を間違えてしまうことが多いため、貼らずに裁判所に持っていき、裁判所に訴状を見てもらってから貼る方が良いと思います。
また、予納郵券(郵便切手のことです。)も納める必要があります。
予納郵券の金額と種類は裁判所によって異なりますので(東京地裁の例)、裁判所に確認をしてください。

まとめ

マンション滞納管理費の支払を請求する訴訟は、それほど難しい訴訟ではありませんが、上記のように最低限提出しなければならない書類もあり、それ以外にも、事案によってほかの書類も提出する必要があります。
うっかり書類を出し忘れてしまうと滞納管理費の請求ができなくなってしまうこともありえますので、十分注意をしてください。
よほどの理由がない限り、弁護士に依頼をして訴訟を追行するのが適切だと思います。

管理費滞納発生時の調査(登記)

マンションにおいて管理費滞納が発生した時の登記事項の調査について

マンションにおいて管理費滞納が発生した場合、まずそのマンションの管理会社がそれを把握し、管理組合の理事会にてその報告がなされるというのが通常だと思います。
それでは、マンションにおいて管理費滞納が発生した場合、管理会社や管理組合の理事会としては、まずどのような調査をすべきなのでしょうか。
まずは、組合員名簿によって届出がなされている連絡先や住所などを調査します。
この情報は元々管理組合が持っている情報ですので調査は容易にできます。
次に、滞納が発生している部屋の登記事項を調査します。

登記事項の調査方法

登記事項を調査する方法としては、①法務局に行って登記事項証明書を取得する、②オンライン申請や郵送申請にて登記事項証明書を取得する、③インターネットで登記情報を取得するという方法があります。

おすすめの方法は③の登記情報提供サービスを利用する方法です。
①と②は登記事項証明書の原本が必要な場合には利用しますが、登記事項を調査するだけであれば、登記情報提供サービスが一番楽ですし、早いです。
慣れていれば2,3分で登記情報を調べることができます。

裁判所に提出する必要があるなど登記事項証明書の原本が必要な場合は、①か②の方法をとることになりますが、法務局に行くのは面倒ですので、よほど急いでいない限り、オンライン申請にて登記事項証明書の請求をするのが楽です。

法務局もオンライン申請や登記情報提供サービスの利用を強く薦めています

注意しなければならないのはインターネットを利用する方法も平日の日中(8時30分から21時まで)までしか使えないということでです。
土日や夜(21時以降)に調査をしようと思ってもできませんので注意が必要です。
土日や夜間しか作業ができないという方は郵便による申請しか方法がありません。

登記情報から分かること

さて、登記情報からどのような情報を得ることができるのでしょうか。

まず第一に管理費を滞納している区分所有者が誰かということが分かります。
当たり前のように感じるかもしれませんが、そうではありません。
区分所有者が変更していることもありますし、管理組合に届け出をしている人とは別の人が区分所有者だったり、共有の場合があり得るからです。

次にその区分所有者の住所が分かります。
ただし、その住所は登記時のものなので、その後の変更を反映していない可能性があります。
管理費を滞納している区分所有者とその住所が分かれば、その住所に管理費の請求書を送付することができます。

さらに、税金関係の差押や抵当権等の情報によって、管理費を滞納している理由が推測できます。
税金を滞納していて差押が登記されていたり、消費者金融の抵当権がついていれば、経済的理由が管理費滞納の理由だと推測できます。

以上のような情報は滞納管理費の請求をする上で知っておくべき最低限の情報です。
これらの情報をもとに、さらに調査を進めたり、滞納管理費の請求をしたりすることになるので、最初の調査が肝心です。