マンションの部屋が共有になっている場合の滞納管理費の支払義務

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マンションの部屋が共有になっている場合の滞納管理費の支払義務

(質問)
当マンションにはAさんという管理費を滞納している区分所有者がいるのですが、Aさんに対して、管理費の支払請求訴訟を提起しようと思い、滞納のあるマンションの部屋の登記を調べたところ、Bさんという方がそのマンションの部屋の共有者になっていることが分かりました。そこでBさんに対して、管理費の支払を請求したところ、「Aとはすでに離婚済みであり、管理費の支払はAが行うことになっている。仮に、私に支払義務があるとしても、私の持分は10分の1であるから、10分の1を超える分については支払う必要がないはずだ。」などと言われてしまいました。管理組合はBさんに管理費の請求をすることはできないのでしょうか。

マンションの管理費の支払義務は不可分債務であり、各共有者が全額の支払義務を負います。

(回答)
貴管理組合はAさんに対してもBさんに対しても滞納管理費全額の請求をすることができます。
民法上、債務者が複数いる場合には各債務者はそれぞれ等しい割合で債務を負うのが原則です(分割債務・民法427条)。
しかし、債権の目的がその性質上又は当事者の意思表示によって不可分である場合には、債権者は一人の債務者に全額の請求ができることになっています(不可分債務・同法430条、432条)。
金銭の支払を目的とする債務の場合、金銭は分割が可能ですので(例えば、100万円を二人で分割する場合、50万円ずつ)、分割債務となるのが原則です。
しかし、マンションの管理費の支払義務は、専有部分の財産的価値、利用価値の維持、向上という各持分権者が共同不可分に受ける利益を得るための費用負担であるから、その性質上、金銭債務であっても不可分債務だとされています(東京高裁平成18年10月31日判決・同年(ネ)第3877号管理費等請求控訴事件)。
したがって、AさんもBさんもそれぞれ管理費の全額の支払義務を負いますので、管理組合としては、Bさんに対して滞納管理費の全額の請求をすることができます。
AさんとBさんとの間で、管理費の支払義務の分担を定めた合意は、AさんとBさんの当事者間では有効ですが、管理組合に対しては効力を有しません。
Bさんとしては、Aさんに対して、支払った管理費分の求償をすることができますので、Bさんにとって酷であるということにもなりません。
Bさんは、Aさんと離婚する時に、マンションの帰属について合意をして登記の移転もしておくべきだったのであり、それを怠ったわけですからBさんにも非があるといえると思います。

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