マンション管理費滞納と公示送達

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マンション管理費滞納と公示送達

公示送達とは

送達とは何か

送達とは、当事者その他の訴訟関係者に対して、訴訟上の書類の内容を了知させるために法定の方式に従って書類を交付することをいいます。

交付送達・出会送達・補充送達・差置送達

交付送達とは、実際に、送達を受けるべき者(訴状の送達の場合は被告)に書類を交付する送達方法であり、この方法をとるのが原則です(民事訴訟法101条)。
送達は、送達を受けるべき者の住所等で送達を受けるべき者に対してなされるのが原則ですが(同法103条1項)、送達を受けるべき者に出会った場所においてすることができる場合(出会送達〔同法105条〕)や、送達を受けるべき者の同居者等の書類の受領について相当のわきまえのあるものに書類を交付することができる場合(補充送達〔同法106条1項、2項〕)、送達をすべき場所に書類を差し置くことができる場合(差置送達〔同法106条2項〕)があります。

付郵便送達

交付送達も補充送達も差置送達もできない場合には、本来の送達場所に書留郵便を発送することによって書類を送達したものとみなす付郵便送達を行うことができます(同法107条)。
この付郵便送達は、送達を受けるべき者の住所等が明らかな場合にしか利用できません。

公示送達

送達を受けるべき者の住所、居所その他送達をすべき場所が不明な場合等には、公示送達を行うことができます(同法110条)。
公示送達は、裁判所の掲示板に裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、いつでも送達を受けるべき者に交付すべき旨が掲示され、掲示を始めた日から2週間(外国にいる者に対する送達の場合は6週間〔同法112条2項〕)を経過することによって送達の効果が生じます(同条1項)。
通常、裁判所の掲示板をチェックしている者はいませんので、送達を受けるべき者が書類の交付を受けることは実際にはほぼありません。

マンション管理費滞納と公示送達

公示送達か付郵便送達か

マンション管理費滞納の訴訟において、滞納者が訴状を受け取らず、訴状の送達ができないということはよくあることです。
長期にマンションの管理費を滞納するような者の場合、裁判所からの書面を受け取らないということもありますし、滞納者が行方不明になっていることもあります。

その場合に、公示送達と付郵便送達のどちらを選択するのかが問題となります。
結論的には、滞納者が住所等に居住していれば付郵便送達、居住しているかどうか不明なときは公示送達になります。
ただいずれの場合も、滞納者の住所等と思われる場所を調査し、居住の実態を確認する必要があります。

マンション管理費滞納案件における公示送達・付郵便送達の調査

まずは管理費滞納のあるマンションの登記を確認します。
そこに滞納者の住所が登記されていますので、その住所で住民票を取得します。
住民票が取得できたら、滞納者の最新の住所を訪問し、居住の実態を調査します。
具体的には、表札や郵便ポストの名前を確認し、郵便物の量を確認する、水道メーター、電気・ガスのメーターの動きを確認する、呼び鈴を鳴らす、隣近所の聞き込みをするということを行います。
表札やポストの名前が滞納者の氏名と違えば、滞納者がそこには住んでいないことが推認されますし、郵便物がポストからあふれていたり、各種のメーターが止まっていれば誰も住んでいないことが推認されます。呼び鈴を鳴らして出てきた人物の話を聞いたり、隣近所の聞き込みをしたりすることで直接的に状況の把握もできます。また、住居等の外観から誰が住んでいるか推測することもあります。
マンション管理費滞納の案件においては、当該マンションに滞納者が居住していることも多いと思いますが、遠方に住んでおり、マンションは賃貸に出しているような場合、現地調査が難航することもあります。そのような場合は、法律事務所や調査会社に依頼をして、費用を払って現地調査をすることが一般的です。
こういった調査を行い、滞納者が住所に居住していることが明らかであれば付郵便送達を選択し、明らかでなければ公示送達を選択します。
いずれの場合も、現地調査報告書(現地の調査を行った者が作成)とともに上申書を裁判所に提出し、それらの送達方法によることを上申します。

公示送達の注意点

訴状が付郵便送達となった場合、被告が第1回の口頭弁論期日に出廷しなければ、被告が原告の主張を認めたものとみなされ、請求が認容されます。
しかし、公示送達の場合、被告が第1回の口頭弁論を欠席した場合でも、証拠調べをしなければならないため、第1回の口頭弁論期日において、証拠の原本を持参し、証拠説明書を提出するなど証拠調べの準備をしておく必要があります。また、証拠が不十分だと請求が棄却されてしまう可能性もあります。
マンション管理費滞納の案件においては、証拠が足りないということは基本的にないと思いますが、管理費の定めのある管理規約や管理費の金額を決定した総会等の議事録を提出する必要があります。管理費の定めについて証拠が足りない場合には、管理組合の理事長様の陳述書という形で管理費の支払義務を立証することもできますので、心配なようでしたら弁護士にご相談ください。

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