生活保護を受けている区分所有者に対して滞納管理費の請求をすることができるか

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管理費を滞納している区分所有者が生活保護を受給している状態のときに滞納管理費の請求をすることは許されるのでしょうか。

そもそも、マンションを所有しているのに生活保護を受けることはできるのか疑問に思われるのではないでしょうか。
生活保護は生活困窮者がその利用し得る資産、能力その他あらゆるものを活用することを要件として行われます。
したがって、預貯金、生活に利用されていない土地・家屋等があれば売却等し生活費に充てることが求められます(厚生労働省HP)。
しかし、現に居住する家は生活に不可欠なものですので必要以上に高額でなければ売却を求められることもなく、居住し続けたまま生活保護を受けることができます。

それでは、そのような生活保護受給者に対して滞納管理費の請求をすることは許されるのでしょうか。
生活保護受給者であっても管理費の支払義務は免除されるものではありませんので、当然に滞納管理費の支払請求をすることができます。

ただし、滞納管理費の支払請求訴訟を提起し、判決を取得したとしても、生活保護費を差し押さえることはできませんので、不動産の強制執行又は59条競売の方法で滞納管理費の回収を図ることになります。生活保護費が預金口座に振り込まれた段階で預金を差し押さえることは可能という意見もありますが、生活保護法58条の趣旨から大いに疑問ですし、差押えのタイミングによっては生活保護費そのものを差押えたものと同視できるとして違法とされる可能性もあると思います。原則として、不動産からの回収を検討するべきでしょう。

なお、道徳的な面から生活保護受給者に対する滞納管理費の請求や不動産に対する強制執行を躊躇する意見もあるかもしれません。しかし、管理費の支払義務はマンションを所有している以上、当然に発生する基本的な義務ですので、まず第一に履行しなければならないものであると考えます。仮に管理費が支払えないのだとしたら、マンションを売却して滞納管理費を完済し、賃貸住宅に居住するべきです。それすらできないのだとしたら自己破産を検討するべきであり、破産した上で生活保護を受給し賃貸住宅に居住することは可能なわけですから、生活保護受給者の最低限の生活は守られるはずです。少なくとも、マンションを所有し続けなければ「健康で文化的な最低限度の生活を営む」ことができないということはあり得ません。本来であれば、滞納管理費の支払が困難であると判断される場合には、行政がマンションの任意売却や自己破産を指導するべきであり、それを怠った皺寄せを管理組合が負うというのは不当であると思います。管理組合としては、滞納者が生活保護受給者であっても毅然として対応をするべきです。しかし、それによって理事長や理事の方が精神的な負担を負われるのは妥当ではないと思いますので、滞納者が生活保護受給者であると判明した時点で弁護士に回収を依頼されるというのも一つの方法だと思います。

 

【参考条文】

生活保護法

(保護の補足性)
第四条  保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2  民法 (明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3  前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。

(差押禁止)
第五十八条  被保護者は、既に給与を受けた保護金品又はこれを受ける権利を差し押えられることがない。

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