マンション滞納管理費の基礎知識

マンション管理費滞納の原因

マンション管理費の滞納には必ず原因があります。
管理費滞納の原因を探ることで滞納の解消や予防をすることが可能です。

マンション管理費を滞納してしまう原因は大きく分けて2つあります。
経済的理由と心理的理由です。

1 マンション管理費滞納の経済的理由

マンション管理費滞納の経済的理由とはその通り経済的な理由からマンション管理費を滞納することです。
経済的な理由にもいくつかのパターンがあります。

そもそもの資金計画に問題があり、途中で管理費を支払えなくなるパターンと最初は問題なく管理費を払えていたが経済状態が悪化したために、管理費の支払が困難となるパターンです。

(1)そもそもの資金計画に問題がある場合

マンション購入時に管理費・修繕積立金の負担を計算に入れていない人はあまりいないと思いますが、マンションの維持管理には管理費以外にも税金や保険料など様々な費用がかかります。
あまりにもギリギリな返済計画を立ててしまうと急な出費などでローンの返済が行き詰ってしまい、管理費を滞納してしまうことがありえます。

また、マンション管理費の金額は一定ではありません。途中で値上がりすることも当然にあります。管理費の値上げを想定していなかった場合、ローンの返済計画が苦しくなることはあり得ます。

これはもう自業自得というほかなく、事前にしっかりとした資金計画を立てる以外に対策はありません。

(2)経済状態が急激に悪化した場合

経済状態が急に悪化する理由は2つあり、収入の減少と支出の増加です。

収入が減少する理由としては、失業や転職、定年退職、家計を支える者の死亡などがあります。
いずれもあらかじめ予測することが必ずしも容易ではないため、実際に原因が発生してから慌てることとなります。
貯蓄や保険などで急な収入減をカバーすることは可能ですので、そういった手段で収入減に備えることが重要です。

支出が増加する理由としては、けがや病気による入院や離婚に伴う支払増があります。
けがや病気による入院の場合、同時に収入も下がることが多いため、深刻な事態になる可能性があります。
保険等によってカバーは可能ですのであらかじめ備えておく必要があります。
離婚に伴う支払増は通常あらかじめ予測できるものではありませんが、離婚時には離婚後の支出の状況が把握できるわけですから、管理費が払えないような状況であれば、マンションを売却して清算するなどするべきです。

2 マンション管理費滞納の心理的理由

マンション管理費滞納の心理的理由とは、滞納者がマンション管理組合やマンション管理会社に対して不満を持っており、その不満をあらわす手段として、故意に管理費を滞納することです。

滞納者がもつ不満はさまざまであり、理事長や管理会社のフロントに対する個人的な恨みから、マンションの管理状況に納得できないなど管理に対する不満、管理費の金額に対する不満などがあります。

しかし、いずれも独りよがりな理由であることが多く、マンション管理費の支払拒絶を正当化できるようなものではありません。

管理会社によるマンション滞納管理費の督促

滞納管理費の回収業務と弁護士法72条

弁護士法72条は「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。 」と定めています。

マンション滞納管理費の回収業務は管理費の滞納という法律事件を扱う行為ですので、マンション管理組合から依頼を受けて回収業務を行うことは、「法律事件に関して」、「法律事務を取り扱った」ことになります。

マンション管理会社が滞納管理費の回収業務を行った場合、弁護士法72条に違反するか

マンション管理会社は「弁護士又は弁護士法人でない者」ですので、「報酬を得る目的で」マンション管理費の回収業務を行うと弁護士法72条本文に違反することになります。
マンション管理会社は滞納管理費を回収しても、そこから成功報酬等をとるわけではないので「報酬を得る目的で」とは言えなさそうな気もします。
しかし、マンション管理会社はマンション管理組合から管理委託料を受けており、その業務の範囲内で滞納管理費の回収業務を行えば、やはり滞納管理費の回収業務と管理委託料が対価関係になり、「報酬を得る目的で」マンション管理費の回収業務を行ったと言わざるを得ません。

また、弁護士法72条但書は「この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。 」と定めていますが、区分所有法やマンション管理適正化法など関連法令のどこにもマンション管理会社が滞納管理費の回収業務を行って良い旨は定められておりませんので、マンション管理会社が滞納管理費の回収業務を行うことは弁護士法72条違反となります。

どこからが滞納管理費の回収業務に当たるか

それではどのような行為を行えば、マンション滞納管理費の回収業務を行ったことになるのでしょうか。

まず、滞納が発生した場合に、自動引落ができなかったことを滞納者に連絡することがあります。
これは単なる連絡ですので、マンション滞納管理費の回収業務にあたらず合法です。

次に、手紙や電話、訪問による督促はどうでしょうか。
自動引落ができなかった旨の連絡だけでは、滞納者がそれを読んでいない可能性もありますし、読んでいても忘れている可能性もあります。
そのような場合に、滞納者に対して手紙や電話、訪問をして連絡することは問題ありません。
また、管理組合では滞納者がなぜ滞納をしているのか知って今後の方針決定の材料にしたいはずです。
管理会社がその管理組合の意向を滞納者に伝達して、滞納者の言い分を管理組合に伝達することも許されます。
単なる伝達であれば、使者に過ぎないため回収業務を行ったとはいえないからです。

しかし、それを超えて例えば滞納者が支払拒否の意思を明確にしているのに、しつこく交渉を行ったり、滞納者の言い分に対して、管理会社が法的な見解を反論したりすることは、管理会社が回収業務を行ったと評価でき、弁護士法72条に違反することになると思います。

滞納者が支払拒否の意思表示を明確にしているかどうかがポイントになると思います。

滞納者が支払拒否の意思表示を明示していない場合であっても、滞納が長期間に及んでいる場合には黙示の意思表示と評価される可能性もありますので、滞納が長期間に及んでいる場合にも督促行為は行わない方が無難です。

マンション管理組合員の方の中には長期滞納が発生した場合にマンション管理会社を責め、督促行為の強化を求める方がいらっしゃいます。
しかし、それは違法な回収業務を指示していることになりかねません。

一般的には数か月以上の滞納が発生した場合には、マンション管理会社は督促の責任を負わない旨の委託契約になっていると思います。
それはマンション管理会社が違法な回収業務を行わないようにするためのものです。

合法的な滞納管理費の回収

合法的にマンション滞納管理費の回収業務を行うには管理組合が直接回収業務を行うか、弁護士に依頼するしかありません(一部司法書士でも許されるものもあります。)。

しかし、マンション管理組合が自ら回収業務を行うというのは、理事にとって大変な負担であり現実的ではありません。

長期の滞納(一般的には6か月以上)が発生したり、滞納者が支払拒否の意思を明確にしている場合には弁護士に依頼するというのが確実です。

違法な回収業務を行いたいと思っているマンション管理会社は存在しません。
なぜなら、そもそも滞納管理費の回収業務を行っても、マンション管理会社に利益はないからです。
マンション管理会社が違法な回収業務を行うのは、マンション管理組合からに強いられて行う場合がほとんどです。
中にはやる気があるあまり暴走してしまい違法な回収業務を行ってしまう管理会社のフロントさんもいらっしゃいますが、極めて稀です。

マンション管理会社に違法な回収業務を行わせないことは、マンション管理組合のコンプライアンス向上にも役立ちますし、マンション管理会社にとっても負担の大きい業務を減らせることになるのですから、どちらにとってもメリットのあるものです。

弁護士に依頼すると、費用がかかってしまうという問題はありますが、K&K PARTNERS法律事務所では、相談料無料・着手金無料・成功報酬25%のみでマンション滞納管理費の回収を行っており、またマンション管理会社様の督促では取りづらい遅延損害金も請求することができますので、マンション管理組合様の負担は少なくて済みます。
まずは一度お気軽にお問い合わせください。