マンション滞納管理費の基礎知識

マンション滞納管理費の支払義務者

マンション滞納管理費は誰に対して請求できるのか

マンションにおいて滞納管理費がある場合に、その滞納をしている区分所有者に滞納管理費の支払義務があるのは当然ですが、それ以外の人に滞納管理費を請求することはできるのでしょうか。
結論からいうと、原則として滞納管理費の支払義務があるのは区分所有者のみであり、第三者に請求することはできません。

1 滞納者の配偶者に滞納管理費の支払義務があるか

まずは、管理費を滞納している区分所有者の配偶者が思いつくかもしれません。
同居をしているのであれば、名義は夫名義であっても、妻も支払義務を負うべきであると考えるのは自然な考えだと思います。
この点、民法761条は「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う」と定めており、この条文が使えるのではないかと考えもあり得ます。
しかし、マンションの管理費はマンションの部屋を所有することによって、管理規約に基づいて支払義務が発生する債務なのですから、契約のように第三者の信頼を保護する必要性はありませんので、管理費支払債務はこの日常家事債務には当たらないと考えられます。
したがって、管理費を滞納している区分所有者の配偶者には滞納管理費の支払を請求することはできないと考えられます。
ただし、配偶者も共有持分を有している場合は別です。共有者は不可分的に管理費の支払義務を負いますので、たとえ持分割合が少なくとも滞納管理費全額の支払義務を負います。

2 滞納者の親(子)に滞納管理費の支払義務があるか

世間一般では子どものしたことは親の責任などといわれます。
法律でも親の責任を認める条文があったりします(不法行為に関する民法714条1項など)。
しかしながら、マンションの滞納管理費に関しては、区分所有者本人が滞納管理費の支払義務を負い、親や子ども、親戚などに支払義務はありません。
法的に支払義務のない親族などに滞納管理費の支払を迫った場合、その督促行為が不法行為に当たることもあり得ますのでご注意ください。
ただし、滞納者が死亡し、相続をしている場合には滞納管理費の支払義務を承継しますので、話は別です。

3 滞納のあるマンションの部屋の賃借人に滞納管理費の支払義務があるか

滞納をしているマンションの部屋を借りて住んでいる賃借人には滞納管理費の支払義務があるのでしょうか。
賃借人が「管理費」や「共益費」の名目で毎月支払を行っていることがありますが、それはあくまでも賃貸人と賃借人との間の契約によるものですので、マンションの管理組合と賃借人との間の権利義務に影響を及ぼすものではありません。
マンションの部屋を借りて住んでいるだけの賃借人には滞納管理費の支払義務はありません。

4 滞納のあるマンションの部屋を買い受けた新所有者に滞納管理費の支払義務があるか

滞納のあるマンションの部屋を購入した新所有者は前所有者の滞納管理費の支払義務を承継しますので(区分所有法8条)、マンションの管理組合は新所有者に滞納管理費の支払を請求することができます。

マンション滞納管理費と民法改正

民法改正がマンション滞納管理費回収の実務に与える影響

今年(2017年)、民法制定から約120年ぶりに債権法を中心に見直した改正民法が成立しました。

主な改正点としては、

  • 時効
  • 個人保証
  • 定型約款
  • 法定利率
  • 契約不適合責任

などが挙げられております。

マンション滞納管理費の関係では、「時効」と「法定利率」が影響のあるところです。

マンション滞納管理費と改正後の「時効」制度

時効に関しては、定期給付債権の5年の短期消滅時効制度は廃止されたものの、債権の消滅時効は債権者が権利を行使することができることを知ってから5年間行使しないときは時効によって消滅すると定められたため、結局、一般的な管理費等の5年間の消滅時効期間に変わりはありません。
ただし、現行法だと、毎月発生する管理費ではなく、修繕一時金などの一時的な費用に関しては10年間の消滅時効期間が適用されるところ、改正法によると、そのような一時金も5年間の消滅時効期間に服することになります。この点は注意しておいた方がよいかもしれません。

マンション滞納管理費と法定利率の変更

また、法定利率が年5%から年3%に変更されたこともマンション滞納管理費の問題に影響があります(改正後は法定利率の変動制度も設けられました。)。
管理規約で遅延損害金の利率を定めているマンションであれば問題ないのですが、そうではないマンションの場合、民法所定の法定利率(現行法であれば5%、改正法だと3%)が適用されることになりますので、遅延損害金の利率が下がることになりますし、マンション滞納管理費の問題は長期化することも少なくありませんので、法定利率の変動制の影響も受け、遅延損害金の計算が煩雑になることも考えられます。
もし、現時点で、管理規約に遅延損害金の利率の定めがないマンションがあれば、早めに規約を変更して、遅延損害金の利率を定めておくことをおすすめいたします。

まとめ

以上の2点がマンション滞納管理費の問題に影響のある改正点ですが、毎月発生する管理費に関しては5年間の消滅時効期間に変わりはありませんし、規約で遅延損害金の利率を定めているマンションであれば法定利率の変更も影響はありません。
そうすると、マンション滞納管理費に関しては、実務上は民法改正の影響はそれほどないものと思われます。
ただ、多少の影響はありますし、知っておいて損はないことですので、マンション管理に携わっている方は最低限は民法改正についても勉強されることをお勧めします。