管理費の承継②(中間取得者)

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管理費の滞納のある区分建物を取得した者(B)が前所有者(A)の滞納を解消せずに、さらに第三者(C)に当該区分建物を譲渡した場合、滞納管理費の支払義務は誰にあるのでしょうか。

管理費を滞納したAに滞納管理費の支払義務があることは間違いありません。また、区分所有法8条によって、現在の区分所有者であるCも滞納管理費の支払義務を負います。

それでは、中間取得者であるBについてはどうでしょうか。

Bは自ら管理費を滞納したわけではなく、また、すでに区分建物を手放しており所有者ではないため、Aが滞納した管理費等の支払義務を負わせるべきではないという学説もあります。また、それと同趣旨の裁判例も以前はありました(大阪地裁昭和62年6月23日判決・判時1258号102頁)

しかし、現在の裁判例は、区分所有建物の管理費等は、建物および敷地の現状を維持・修繕する等のために使用されるものであり、当該建物等の全体の価値に化体しているということができ、中間取得者も当該建物の区分所有権を取得することによって、その全体の価値を取得したと評価できること、区分所有法8条は特定承継人を現に区分所有権を有している特定承継人に限定しているわけではないことなどを理由として、中間取得者であるBも区分所有法8条の特定承継人に当たり、Aが滞納した管理費等の支払義務があるとするものが大勢を占めています(東京高裁平成23年7月6日判決(原審・東京地裁平成23年2月25日判決)、大阪地裁平成21年3月12日判決・判タ1326号275頁など)。

管理組合としては、A・B・Cいずれに対しても、滞納管理費等の請求をすることができるということになりますので、A・Cにしか請求できない場合よりも滞納管理費の回収が見込めることになります。

なお、Cが管理費の滞納を解消しない場合に、59条競売を検討することがあり得ますが、その際には、59条競売以外の他の方法によっては滞納を解消できないことが要件となるため、A・Cだけではなく、Bに対しても滞納管理費の請求を行っていることが必須になると考えられます。

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