マンションの管理費と住宅ローン

マンションの住宅ローンと管理費について

マンション購入の際は管理費・修繕積立金の支払に注意!

マンションを購入する際に気をつけなければならないことは、毎月の住宅ローンの支払のほかに管理費・修繕積立金の支払が発生するということです。
この点を考慮せずに住宅を購入してしまうと、住宅ローンと管理費等という二重の支払に家計が圧迫され、破綻してしまうことがあり得ます。
K&K PARTNERS法律事務所では、マンションの滞納管理費の回収の仕事をさせていただいておりますが、マンション購入からわずか1年で管理費を滞納してしまう区分所有者というのも珍しくありません。
マンション購入時には予想しなかった事情の変化によって管理費の支払ができなくなり、滞納をしてしまうというのは分かるのですが、マンション購入から1年で管理費を滞納するというのは確信犯か計画性が欠落しているかどちらかというしかありません。

住宅ローンと管理費の相違点

住宅ローンも管理費もマンションに関する支払という点では同じですが、様々な点で違いがあります。
住宅ローンと管理費の相違点を表にすると以下の通りです。

住宅ローン 管理費
目的 貸付金の返済 マンションの維持・管理
毎月の支払 大きい 大きくない
担保権 抵当権 先取特権
未払に対する対応 厳しい 厳しくない
金利 利息は低いが、遅延損害金は14%程度 遅延損害金14~18%が一般的
支払義務の承継 なし 新所有者が承継

住宅ローンの場合、毎月の支払額も大きく、滞納をするとすぐに督促の連絡があるなど厳しい対応を取られるため、区分所有者も優先的に支払計画を立てます。
住宅ローンを滞納してしまうと抵当権を実行されてしまい、持ち家を失ってしまうというプレッシャーも支払を促す方向に働きます。
しかし、管理費の場合、毎月の支払額も住宅ローンの返済額よりも大きくないことが多く(リゾートマンションなど特殊な例を除きます。)、滞納に対する対応も厳しくないことが多いため、つい滞納をしてしまうということが少なくありません。
また、管理費を滞納したとしても、すぐに訴訟提起されたり、先取特権を行使されたりすることはないため、滞納が膨らんでしまうこともあります。
滞納が長期に及んでしまうと、その支払は容易ではありません。

管理費滞納によってマンションを失わないために

これまで、住宅ローンをきちんと支払っていても、管理費を滞納してしまったために、持ち家を失ってしまうという例をたくさん見てまいりました。
色々な事情があるのだとは思いますが、根本的にはマンション購入時の計画性の欠如が理由だと思います。
マンション購入時には管理費の支払義務も考慮して余裕を持った返済計画を立てるということが何よりも重要です。

少子高齢化社会とマンション滞納管理費

少子高齢化社会がマンション滞納管理費回収の実務に与える影響

平成29年版高齢社会白書によると、2016年の日本の総人口に占める65歳以上の割合は27.3%と実に4人に1人が高齢者という時代を迎えました。
2065年には高齢化率が38.4%となると予測されているようです。
このような少子高齢化社会がマンション滞納管理費回収の実務に与える影響について考えてみました。

1 相続人不存在の案件の増加

まず第一に考えられるのが相続人が不明の案件や相続人が存在しない案件が増加することです。
少子高齢化によって孤独死が増えるとは限りませんが、子どもの数や兄弟姉妹の数は少ないはずですので、必然的に相続人がいないケースも増加するはずです。
相続人が存在しない場合、マンションの管理組合としては滞納管理費の回収のために相続財産管理人の選任の申立てをしなければなりませんので、多大な費用と手間がかかってしまいます(費用として100万円以上かかるケースもあります。)。
今後はそのようなケースも想定して、あらかじめ資金をプールしておくことも検討すべきだと思います。

2 相続人調査の簡略化

逆に、子どもや兄弟姉妹の数が少ないことは相続人調査が簡単になるというメリットもあります。
明治大正生まれの方の相続人調査をすると、数十人の相続人が判明するというケースもあり、手続が極めて煩雑になることがあります。
少子高齢化社会においては、そのようなケースはレアケースになっていくものと思われます。

3 理事の高齢化

マンション内の住民の高齢化が進むことによって、理事になる方の平均年齢が高くなるということが考えられます。
最近は元気な高齢者の方も多いため、一概にはいえないのですが、高齢になると意欲が低下してしまい、管理組合の活動自体が停滞してしまうというおそれもあります。
管理組合の活動が停滞すると、滞納管理費の問題なども先送りにされてしまい、問題が重症化してしまうということがあり得ます。
そういったことにならないように、組合活動を活発化させ、元気な管理組合を作っていくことが重要であると思います。

4 認知症を原因とする管理費滞納の増加

高齢者が増加するということは認知症の患者が増加するということにもつながると思います(医療の発展を考慮しなければ)。
認知症になると、管理費を払い忘れてしまうことも増えるでしょうから、認知症を原因とした管理費の滞納も増加すると思われます。
成年後見人などがいれば、管理費滞納を防止できますが、マンション管理組合には後見開始の審判を請求する権利がありませんので(民法7条)、主体的に成年後見人をつけることができません。
市町村長が後見開始の審判を請求することができるという規定はありますが(老人福祉法32条)、市町村長が後見開始の審判を請求することは稀です(過去に私が扱った案件で、どう考えても成年後見人が必要なケースで、市町村長に後見開始の審判の請求を依頼したという案件がありましたが、その市町村長は結局後見開始の審判の請求をしませんでした。)。
今後、さらに少子高齢化が進み、身寄りのない認知症の高齢者が増加することを考えると制度の改善が強く望まれます。個人的には、住民にとって最も身近なコミュニティの一つであるマンションの管理組合に後見開始の審判の請求権が付与されることが望ましいと考えています。
いずれにしても、高齢の区分所有者が認知症に罹患してしまった場合にすぐに気づいてケアしてあげられるようなコミュニティの形成は不可欠だと思いますので、日々のマンション管理組合の活動が何よりも重要だと思います。