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マンションの管理組合とは何か

「管理組合」が存在しないマンションはあり得るか

「管理組合がない」vs「管理組合のないマンションなど存在しない」

Aさん「うちのマンションには管理組合がない。」

Bさん「管理組合のないマンションなど存在しない。」

一見すると、AさんとBさんの発言は矛盾しているように見えます。
しかし、「管理組合」という言葉は多義的です。

区分所有法3条にいう「区分所有者の団体」としての「管理組合」

区分所有法3条によると、マンションの区分所有者(各部屋の所有者のことです。)は、当然に、全員でマンションの管理をするための団体を構成することになっています(以下、この団体を「区分所有者の団体」といいます。)。
マンション管理適正化法2条3号は、この「区分所有者の団体」を「管理組合」と定義しています。
したがって、この意味で「管理組合」のないマンションは存在しないことになります(ただし、分譲マンションに限ります。いわゆる一棟売りマンションは除きます)。
Bさんの言っていることは間違っていません。

権利能力なき社団としての「管理組合」

しかし、通常、「管理組合」という言葉を使う場合、それは、実際にマンションを管理する団体、すなわち実体を伴った団体としての「管理組合」を意味することが多いと思われます。
Aさんは、この意味で「管理組合」という言葉を使っているのです。
マンションによっては、規約が存在せず、集会も開かれない、代表者もいないというところがあります。
このようなマンションにおける区分所有者の団体は「管理組合」としての実体を備えておらず、このような場合に、そのマンションには「管理組合」がないという言い方をすることがあります。また「管理組合を設立する。」と言ったときの「管理組合」も実体を伴った団体としての「管理組合」を意味します。区分所有者の団体としての「管理組合」であれば法律上当然に団体が構成されますので「設立する」ということはあり得ません。
通常のマンションにおいては管理組合が管理会社に管理業務を委託することによってマンションの管理を行っています。管理組合のないマンションにおいては各区分所有者が管理会社と契約する形で管理を行うなどしており、管理に問題が発生しているところも少なくありません。
マンションの管理は団体的に行うのが適切ですので、管理組合のないマンションではできるだけ管理組合を設立するべきであると思います。

実体を伴った団体を法的には「権利能力なき社団」と呼びます。
権利能力なき社団であるマンション管理組合においては、その財産は管理組合に団体的に帰属し、組合員個人は持分権を有さないことになります。
したがって、一度支払った管理費や修繕積立金についても個々の組合員は持分権を有さず、分割請求や返還請求などはできないことになります。
通常、マンションの管理規約において、管理費や修繕積立金の分割請求や返還請求を禁止している管理組合が多いと思いますが、そのような規約がなくとも民法理論上、当然にそのような帰結になります。

「管理組合」という用語の通常の用法

一般的には、後者の意味で「管理組合」という言葉を使うことが多いと思います。
ただし、ほとんどのマンションにおいては、実体を備えた管理組合が存在しますので、前者の意味での「管理組合」と後者の意味での「管理組合」は重なることが多く、「区分所有者の団体=管理組合」と考えて差支えはありません。
本ブログで「管理組合」という単語を用いる場合、後者を意味しますが、特に注記がない場合、「区分所有者の団体=管理組合」という一般的なマンションを想定しています。

何らの前提もなく、「この区分所有者の団体を一般に『管理組合』と呼んでいる。」などという書き方をした本を見かけますが、正確ではないと思います。

マンションは誰のものか―エレベーターの維持管理は誰がしなくてはならないのか?

分譲マンションにおいて、マンションの各部屋(専有部分)は、所有権の目的になりますので、その部屋を購入するなどして所有権を取得した人(区分所有者)のものとなります。
これは自然的な感覚として誰にでも理解できるものです。

それでは、マンションのエレベーターは誰のものでしょうか。

これは感覚的に勘違いをしてしまっている人も多いと思います。
つまり、マンションを販売した販売会社や(多くの場合その子会社である)管理会社だと思い込んでしまっている人がいるのではないでしょうか。

しかし、これは誤りです。

専有部分以外のマンションの部分は区分所有者全員の共有になります(区分所有法11条1項)。
つまり、エレベーターはマンションの区分所有者全員のものということになります。

このような部分をマンションの共用部分といいます。
ほかには、マンションの外壁や階段、玄関ホールなどが共用部分に当たります。
また、規約によって、マンションの一部屋を管理人室として共用部分にしているマンションもあります。

共用部分は、マンションの区分所有者全員の共有ですから、その維持管理はマンションの区分所有者が行わなければならず、またその費用は、原則として、マンションの区分所有者全員が持分に応じて負担することになります。
すなわち、エレベーターの保守点検はマンションの区分所有者が行わなければならないものであり、その費用もマンションの区分所有者全員が負担しなければなりません。マンション管理会社がエレベーターの保守点検業務を行っているマンションが大多数だと思いますが、それはあくまで管理組合(マンションの区分所有者全員によって構成される団体)がマンション管理会社に当該業務を委託しているに過ぎないのです。

まずはエレベーターをはじめとしたマンションの共用部分が自分たちの共有であるということを意識することが、適切なマンション管理の第一歩ではないでしょうか。

 

 

【参考条文】

建物の区分所有等に関する法律

(建物の区分所有)
第一条  一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。

(定義)
第二条  この法律において「区分所有権」とは、前条に規定する建物の部分(第四条第二項の規定により共用部分とされたものを除く。)を目的とする所有権をいう。
2  この法律において「区分所有者」とは、区分所有権を有する者をいう。
3  この法律において「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。
4  この法律において「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう。
5 (以下省略)

(共用部分)
第四条  数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。
2  第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

(共用部分の共有関係)
第十一条  共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。