マンションの部屋が2名以上の共有である場合、管理費の支払義務はどうなるのでしょうか。
夫婦でマンションを購入する際にその部屋を共同名義にすることはよくあることです。同居している時は良いのですが、別居後や離婚後に管理費の滞納発生してしまった場合、居住していない一方に滞納している管理費の全額を請求することはできるのでしょうか。
管理費の支払義務は区分所有者にありますから、居住していなくても管理費の支払義務はあります。それでは、その支払義務のある管理費の額は、全額でしょうか、それとも、持分割合に従った額(例えば、2分の1)でしょうか。
共有持分割合に従った額しか支払義務を負わないとすると、共有者の1人が無資力になった場合に、管理組合の管理費の回収に困難が生じることになります。
この結論は管理費等の支払義務の法的性質によることになります。管理費等の支払義務が、分割可能な債務(分割債務)であるときは、区分建物の共有者は、それぞれ自分の共有持分割合に従った額のみ支払えば良いことになりますが、管理費等の支払義務が、性質上不可分(不可分債務)である場合には、各共有者は管理費等の全額について支払義務を負うことになります。
この点、東京高裁平成18年10月31日判決(ウェストロー・ジャパン)は、「マンションの1つの専有部分の区分所有権を共有する複数人が管理組合に対して負担する管理費等の支払義務は,専有部分の財産的価値,利用価値の維持,向上という各持分権者が共同不可分に受ける利益を得るための費用負担であるから,その性質上,金銭債務であっても,不可分債務であると解するのが相当であり,管理組合は共有者の1人に対し,その専有部分が単独所有であった場合にその単独所有者が負担すべき管理費等の全部を請求することができ」るとしました。
すなわち、マンションの管理費の支払義務は不可分債務であり、管理組合は、共有者の一人に対して、滞納管理費の全額を請求することができるということです。
例えば、夫婦が共同名義人になっていたが、離婚して妻が出ていった場合において、居住中の夫が無資力となって管理費を滞納したとしても、元妻が共有者のままであれば、管理組合は元妻に滞納分全額を請求することができ、その全額を回収することができるという結論になります。元妻からすると、居住もしていないのに管理費等の支払義務を負うのは不当だと考えるかもしれませんが、元妻はマンションという資産を所有しており、管理費等はそのマンションの価値の維持に使われていること、元妻は元夫に対して求償できることを考えると何ら不当ではありません。
元妻としては、離婚をする時点で共有名義のマンションの帰属を明確にするとともに、仮に共有状態が継続するのであれば、元夫が管理費を滞納しないように監視をするなどして、管理費の滞納額が大きくなる前に問題を発見するように努めるべきでしょう。離婚をするのであればマンションの名義は単独名義にするのが理想ですし、そうするように努めるべきです。