区分所有法3条の団体が当然に裁判の当事者となるか
区分所有法3条は、マンションの区分所有者らが全員で区分所有者の団体を構成するものとしていますが、この団体(本稿では、一般的なマンション同様に「管理組合」と構成員を同じくするものとして話を進めます。)は、当然には裁判の当事者となるわけではありません。
つまり、マンションでトラブルが発生したとしても、マンション管理組合が原告となって訴訟を提起することができない可能性があるということです。
これは非常に不便です。
なぜなら、マンション管理組合が原告となれない場合、組合員全員が原告となる必要がある可能性があるからです。被告となる場合も同様でマンションの区分所有者全員を被告にする必要があります。数十戸単位のマンションであればともかく、500戸ものマンモスマンションとなると、原告名だけで何ページにもなってしまうような訴状を作成しなければなりません。全員から訴訟委任状を取るのも大変です。一人でも反対する人がいたら、裁判自体ができなくなる可能性もあります。
マンション管理組合が権利能力なき社団にあたるか
この問題について、民事訴訟法は、「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。」(民事訴訟法29条)と定めています。
例えば、マンション滞納管理費の回収において滞納者に対して訴訟を提起する場合には、マンション管理組合が原告となり、滞納者を被告として管理費等支払請求訴訟を提起することができます。
そして、判例によると、その法人でない社団といいうるためには、「団体としての組織をそなえ、そこには多数決の原則が行なわれ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、しかしてその組織によつて代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものでなければならない」とされています(最高裁昭和39年10月15日第一小法廷判決・民集18巻8号1671頁)。
マンション管理組合に関しては、区分所有法の規定がありますので、マンション管理組合が「団体としての組織をそなえ、そこには多数決の原則が行なわれ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続」するという要件は満たしており、また「総会の運営」についても区分所有法で定められているため要件を満たすと思われます。
したがって、マンション管理組合が組合名で訴訟を提起するには、「代表の方法」や「財産の管理その他団体としての主要な点が確定」していればよいものと考えられます。
具体的には、(1)代表者(多くの場合、理事長)の決定方法が定まっていること(規約で定まっていれば間違いないですが、集会(総会)で決定方法を定めた場合や、慣習的に定まっている場合でも許されると思います。)、(2)規約が存在し、「財産の管理その他団体としての主要な点」についての定めがあることが必要になると思います。
規約の存在は絶対必要というわけではありませんが、規約がなければ、「財産の管理その他団体としての主要な点」について定めることは不可能であるように思われます。
理事長がいなかったり、規約が存在しないマンションは、将来、紛争が発生した場合に、訴えるときはもちろん、訴えられるときにも問題が起きますので、対策を講じる必要があります。
そのようなマンションにお住まいの方は、ぜひマンション管理士や弁護士等の専門家に相談されることをおすすめします。