マンションの管理費を滞納している区分所有者が管理組合に連絡することなくそのマンションの部屋を第三者に売却し、いつの間にか所有者が変わっていたということがあります。
そもそも法的には、区分所有権を売却する際に、区分所有者は管理組合から承諾を得る必要はありませんし、また、原則として報告義務も負いませんので、いつの間にか所有者が変わっていたというのはあり得ることです(一般的には所有者変更届を出すことになっており、それに従う区分所有者がほとんどだとは思います。)。
それでは、そのような場合、管理組合はどのような対応を取ればよいのでしょうか。
まず、管理費を滞納していた区分所有者(以下「旧所有者」といいます。)に対しては、当然に区分所有権喪失時までの滞納管理費を請求することができます。
もし、旧区分所有者がマンション売却後に行方不明になっている場合は、こちらをご参照ください。
次に、旧所有者からマンションの部屋を購入した新たな区分所有者(以下「新所有者」といいます。)に対してですが、新所有者は区分所有法8条に基づき、旧所有者が滞納していた管理費を承継しますので、管理組合は新所有者に対しても滞納管理費の請求をすることができます。
新所有者が滞納管理費の存在を知っていたかどうかは関係ありません。
新所有者が旧所有者が管理費を滞納していたことを知らずにマンションを購入したとしても、新所有者は旧所有者が滞納していた管理費の支払義務を免れることはできません。
また、滞納管理費の支払については、旧所有者と新所有者との間で旧所有者が支払うことで合意をしていることがあります。
しかし、その合意はあくまでも旧所有者と新所有者との間でしか効力を有しませんので、管理組合はその合意に拘束されることはなく、全額を新所有者に対して請求することができます。
新所有者は滞納管理費の存在を知らなくてもその支払義務を負い、また旧所有者との間で滞納管理費の支払の割合について合意をしていたとしても管理組合から滞納管理費全額の支払を求められる可能性があるのですから、酷な立場に置かれているようにも思えます。
しかし、新所有者が旧所有者が滞納していた管理費を支払った場合、新所有者が旧所有者との間で新所有者が管理費の支払をする旨の合意をしていない限り、新所有者は支払った滞納管理費の全額を旧所有者に求償をすることができますので、決して不当ではありません。
なお、当然のことですが、区分所有権の移転後に新所有者が滞納した管理費については、新所有者のみが支払義務を負います。
【参考条文】
建物の区分所有等に関する法律
(特定承継人の責任)
第八条 前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。