東京地裁平成28年5月16日判決(東京地裁平成28年(ワ)第3526号管理費請求事件)
1.事案の概要
マンション管理組合法人が管理費の滞納者の相続財産管理人に対して、管理費・修繕積立金・水道料・弁護士費用及び管理費・修繕積立金・水道料に対する管理規約所定の年18%の割合の遅延損害金と弁護士費用に対する年5分の遅延損害金を求めた事案。水道料は管理組合が立て替えて支払い、組合員に請求をしていた。
2.判決の要旨
裁判所は、当該マンションの管理規約及び水道供給規定等には、マンションの各戸の水道料に関する支払期日の定めはないから、組合員のマンション管理組合に対する水道料債務は期限の定めがない債務であると認定し、また、当該マンションの管理規約及び水道供給規定等には、マンション管理組合の組合員が水道料を支払期日までに支払わなかった場合の遅延損害金に関する定めはないから、未払水道料に対しては民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求できるにとどまるとして、水道料に対する管理規約所定の年18%の割合の遅延損害金を否定した。
3.コメント
本判決は、水道料に管理規約所定の遅延損害金の利率が適用されない理由として、当該マンションの管理規約等に水道料が支払期日までに支払われなかった場合の遅延損害金の利率の定めがないことを挙げています。
そうだとすれば、マンションの管理規約に水道料に関する遅延損害金の利率が定められていれば、管理規約所定の遅延損害金の利率が適用されると読めます。
組合員が滞納することによって受ける不利益は管理費も水道料も変わりがありませんので、水道料についてのみ管理規約によっても遅延損害金の利率を定められないというのは合理的ではありませんので、管理規約に定めがあれば水道料についても管理規約所定の遅延損害金の利率が認められるべきであり、そのことに争いはないと思います。
本判決は、水道料は管理費に含まれないという認定をしていますが、滞納による管理組合の不利益は水道料も管理費も違いがないわけですから、可能な限り管理費の範囲は広く認定されるべきではないかと思います。本件マンションの管理規約の文言が分からないためはっきりしたことは言えませんが、管理規約が管理費の定義を明確にしていないのであれば、組合員が管理組合に対して日常的に負う債務は広く管理費と認定すべきではないかとも思います。
いずれにしても、ここのマンションの管理規約によって、解釈が異なることになりますし、本件マンションの管理規約の文言が分からない以上、本判決の結論が妥当か否かの判断はできません。一つのケースとして認識しておけば足りる判決だと思います。